「空調設備を仕事にするために必要な知識は?」空調設備の仕事に転職したい方や独立したい方は、基礎知識をしっかりと身につけておくことが重要です。空調設備は温度や湿度、気流の調節、空気の清浄などを行い、私たちが快適かつ健康に過ごせるように空気を整えてくれる設備です。人々の生活に欠かせない空調設備ですが、その言葉の意味や種類などを詳しく知らない方は多いかもしれません。
本記事では、空調設備の基礎知識を解説します。空調設備を仕事にして新たな一歩を踏み出したい方は、ぜひこの記事の内容をお役立てください。
空調設備とは
空調設備とは、人々が過ごしやすいように空気を整える設備です。私たちが室内で快適に過ごせるのは、空調設備のおかげといっても過言ではありません。
これだけを聞いても、空調設備の意味や役割を具体的にイメージすることは難しいでしょう。
まずは、空調設備の概要を初心者向けに説明します。
空調設備をわかりやすくいうと
空調設備とは、「空気調和設備」を略した言葉です。わかりやすくいうと、室内で生活する人が快適かつ健康に過ごせるよう、換気や温度調整などを行う設備を意味しています。
一口に空調設備といっても、そこに含まれる機能はさまざまです。
たとえば、次のような機能を1つでも有していれば、空調設備と呼ぶことが可能です。
- ・換気
- ・温度調節
- ・湿度調節
- ・気流調節
- ・空気の清浄
商業施設やオフィスなどで生活する人間に対して空気を調整する設備はもちろん、食料品や医療医薬品などの製造物に適した生産環境を整えるための設備も存在しています。
このように空調設備は、あらゆる場面で私たちの生活を支えてくれているのです。
空調設備の役割と目的
空調設備の役割は、室内で人々が快適かつ健康に暮らしたり働いたりできるよう、空気環境を整えることです。
室内の空気は日照や季節、立地条件、地域などさまざまな要因で変化します。また、ストーブの使用や喫煙などによって発生する化学物質も、室内の空気に影響を与えます。
このような要因によって空気の温度や湿度、一酸化炭素などのバランスが崩れると、不快感が増したり健康に悪影響が生じたりするため注意が必要です。空調設備はこのバランスが崩れた空気を整え、快適に過ごせるようにしてくれるのです。
空調設備と聞くと、冷暖房をイメージする方が多いかもしれません。しかし、温度調節だけが空調設備の目的ではない点が重要なポイントです。
空調設備とエアコンの違い
空調設備と似た意味を持つ言葉として、エアコンが挙げられます。どちらも空気の温度や湿度を調整することが可能なため、区別がつきにくいと感じる方もいるでしょう。
エアコンは、空調設備の一部に含まれます。ただし、空気の調整に対して可能な機能が限られるため、「空調設備=エアコン」というわけではありません。
空調設備は温度や湿度の調整のみならず、気流のコントロールや空気の清浄も行います。さまざまな機能を発揮するために、1つの施設に複数の装置を組み合わせて設置することも少なくありません。
そのためエアコンは、空調設備を構成するひとつの要素ということになります。
空調設備の種類
空調設備には、さまざまな種類が存在しています。
ここでは、空調設備の種類を次の分類方法で紹介します。
- 目的
- 流体
- 送風方式
より知識を深めるためにも、それぞれの分類をみていきましょう。
目的別の種類
空調設備は、目的別に2つの種類に分けられます。
1つ目は、「保健用空調(対人空調)」です。商業施設やオフィス、病院など一般的な建物に設置されている空調設備のことで、そこで暮らす人々の健康や快適性を維持するために使用されます。
2つ目は、「産業用空調(プロセス空調)」です。食料品や医療医薬品などを製造する工場や貯蔵庫、農園施設などに設置されている空調設備のことで、快適性維持に加え、品質管理や機械の機能維持などを目的に使用されています。
私たちが普段接する機会が多いのは、保健用空調のほうです。具体的な例を挙げると、ショッピングモールの換気システムや冷暖房が保健用空調に含まれます。
流体別の種類
空調設備は、空気の過熱や冷却に使用されている流体によっても分けられます。流体とは、水や化学薬液などの液体と、空気やガスなどの気体の総称です。
1つ目の分類は、空気を使って熱を運ぶ「全空気方式」です。室内の空気と屋外の空気を混ぜ合わせ、ダクトを通じて室内へ供給します。温度管理と換気を同時に行える点が特徴的で、ダクトを設置できる大きめの空間に向いています。
2つ目の分類は、水素とフッ素と炭素の化合物(HFC:代替フロン)を使って熱を運ぶ「冷媒方式」です。冷媒(フロン)は家庭用エアコンにも使用されているため、聞いたことがある方は多いかもしれません。屋外の空気を取り込み、冷媒で熱を運ぶことで冷風や温風を供給します。
3つ目の分類は、冷水や温水を使って熱を運ぶ「全水方式」です。空気を使用しないため、ダクトを設置する必要がない点がメリットです。しかし、空気清浄のために別途装置が必要な点、水漏れ事故が起きる可能性がある点がデメリットとして挙げられます。
4つ目の分類は、水と空気の両方を使って熱を運ぶ「空気・水併用方式」です。外気を取り入れるためのダクトが必要ですが、全空気方式と比べると省スペースです。全水方式と同様、水漏れのリスクがあります。
送風方式別の種類
空調設備は、設置方法や送風方法に応じて2種類に分けられます。
1つ目は、「中央空調方式(セントラル方式)」です。中央機械室もしくは管理室に熱源をまとめ、一元的に制御する点が特徴的です。1フロアあたり300坪を超える大規模な施設では、中央空調方式を採用することが多い傾向にあります。
なお中央空調方式には、建物内の送風量を一気に制御する「単一ダクト定風量方式」と、送風量を換えられる「単一ダクト変風量方式」の2つの種類があります。
2つ目は、各フロア(各ゾーン)に熱源が分散設置されている「個別空調方式」です。フロアもしくは部屋ごとに温度調整が可能な点が特徴的です。中規模以下の施設では、個別空調方式を採用することが多い傾向にあります。
空調設備を構成する要素
空調設備は、以下の3つの要素によって構成されています。
- 室内機
- 室外機
- 配管
ここからは、各構成要素の役割についてみていきましょう。
室内機
室内機とは、室外機から運ばれてきた熱媒体で熱交換し、空気の循環や冷暖房をするための装置です。室内に設置されるため、「室内機」と呼ばれます。
室内機と聞くとエアコンをイメージする方が多いかもしれませんが、実は他にもさまざまな種類が存在しています。
室内機の一例は、次のとおりです。
- ・エアコン
- ・床下エアコン
- ・床暖房
- ・全館空調
- ・ダクト式空調 など
また、室内機は家庭用と業務用で特徴が大きく異なります。家庭用室内機は「一般的な生活を送るうえで必要な冷暖房能力」、業務用室内機は「面積や建築構造、業種などを考慮した冷暖房能力」が求められます。
そのため、「オフィスが狭いから家庭用エアコンでも問題ない」と安易に判断することは望ましくありません。事業に使用する室内機を設置する際は、専門家が現地を調査し、適切な業務用室内機を選ぶ必要があります。
室外機
室外機とは、冷熱や温熱を作り出す熱源機です。屋外に設置されることが多いため、「室外機」という名前がついています。
室外機が冷熱や温熱を作り出す際の熱源には、次の3つの種類があります。
- ・冷凍機:冷熱を作る
- ・ボイラー:温熱を作る
- ・ヒートポンプ:冷熱と温熱の両方を作れる
また、冷媒ガスを使用している室外機には、冷媒を流して温度をコントロールする圧縮機(コンプレッサ)が搭載されています。
このコンプレッサを駆動する仕組みとして、次の2つが挙げられます。
- ・EHP(Electric Heat Pump):電気モーターによって駆動する
- ・GHP(Gas engine Heat Pump):ガスエンジンによって駆動する
室外機は、上記のようにさまざまな熱源や仕組みを利用して、冷熱や温熱を作り出しているのです。
配管
配管とは、室外機で出力した熱媒体を室内機に運ぶ管です。使用する管の数に応じて、次の2種類に分けられます。
往き配管と戻り配管が1組。夏は冷水配管、冬は温水配管として使用するため、冷房と暖房を切り替えて使う「冷暖房切替運転方式」となる。往き配管と戻り配管が2組。1組を冷水配管、もう1組を温水配管として使用するため、冷房と暖房を同時に使える「冷暖房同時運転方式」となる。
配管の種類 | |
---|---|
2管方式 | 往き配管と戻り配管が1組。 夏は冷水配管、冬は温水配管として使用するため、冷房と暖房を切り替えて使う「冷暖房切替運転方式」となる。 |
4管方式 | 往き配管と戻り配管が2組。 1組を冷水配管、もう1組を温水配管として使用するため、冷房と暖房を同時に使える「冷暖房同時運転方式」となる。 |
家庭用では2管方式、業務用では2管方式もしくは4管方式が採用されるケースがほとんどです。
往き配管2本と戻り配管1本で構成される3管方式もありますが、熱損失が大きくなるなどの理由で、現在利用されることは少なくなっています。
空調設備の仕事とは?
空調設備を仕事にする場合は、どのような作業を行うことになるのでしょうか。
最後に、空調設備の仕事について説明します。
空調設備の仕事内容
空調設備業者の仕事内容としては、次のようなものが挙げられます。
- ・空調設備の新規取り付け
- ・古い設備の更新工事
- ・配管工事
- ・既存空調設備のメンテナンス
- ・空調設備の保守点検
エアコンなどの空調設備機器を取り付けるだけではなく、配管工事をしたり保守点検をしたりすることも、仕事のうちに含まれます。
商業施設やオフィスビルなどの大規模な工事から、戸建て住宅などの小規模な工事まで、空調設備はさまざまな現場で必要とされます。また、近年は都市開発計画による建設ラッシュが続いており、空調設備の需要はますます増してきました。
このように空調設備は、非常にニーズの高い業種なのです。
空調設備の繁忙期
空調設備の仕事は、夏場と新生活が始まる3~4月に繁忙期を迎えます。
夏場は、自宅などにエアコンを新規で設置する人や修理する人が増えるため、依頼が殺到します。また、新生活が始まる3~4月は引っ越しが増えるため、エアコンの設置依頼が多くなる傾向にあります。
業務用の空調設備に関しても、稼働がピークになる夏から秋くらいまでが繁忙期です。ただし、施設の新設工事はこの限りではありません。
施設の竣工時期にはばらつきがあるため、1年を通して安定的に仕事を獲得しやすい傾向にあります。
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空調設備とは、室内で生活したり働いたりしている人の快適性や健康を維持するために、換気や温度調整などを行う設備です。
エアコンの取り付けや空調設備に関する仕事を検討している方は、ぜひ今回紹介した基礎知識を身につけてみてくださいね。
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